2015年8月3日月曜日

レパートリー講座 Vol.3




今回はヴィラ=ロボスの名作プレリュード第1番。
曲全体を印象付ける抒情的なメロディー部分だけ取り出して書いてみようと思います。

言わばブラジル人が根っこに持っている「歌」についてです。

まずヴィラ=ロボスはオペラ作曲家のプッチーニに影響を受けたと言っている。そして19世紀頃にブラジルのサロンやポルトガル王室で流行した「モジーニャ」の心が彼の作品の中に息づいている。

モジーニャはブラジルの最初のポピュラーミュージックと言われているけれど、同時にポルトガルのファドの原型にもなったとも伝えられているようです。

この独特の抒情的で感傷的な漂いは、十代の頃からブラジル音楽を長年聴いている私には机上の空論ではなく、感覚として少なからずわかります。*ここで言うブラジル音楽はポピュラーの事を指しています。(ヴィラ=ロボスを弾き始めたのは9才からです。)

そして更に私はポルトガルに1か月滞在した事があり、その間ファドハウスでファドのライヴを何度も聴いているし、又実際にファドのミュージシャン達ともセッションをしたり、素晴らしく天才的なポルトガル在住のブラジル人の女性歌手とも共演した事があるので、どちらの感性も肌で感じることが出来ます。共演したブラジル人の女性歌手は私が帰国する直前にもホームパーティーを開いて下さり、何曲も私の為にブラジルの歌をうたって下さいました。

このような経験を得て、必然的に「ブラジル風バッハ」にその影響を見出す事が出来るし、また「練習曲第11番のLentoの部分にも「モジーニャ」を感じます。

前奏曲第1番も例外ではありませんよね。動画は雰囲気だけでもと思い、参考までにヴィラ=ロボス作のモジーニャをアップしておきます。

それにしても、ポルトガルでは貴族のお茶会でサロン・コンサートをさせて頂き、お姫様のようにメイド様手作りの世界中のお菓子を頂き、王族の方がお屋敷敷地内の教会で私のリサイタルを主催して下さったことが、今では夢物語のようです。